関東中部G空間情報技術研究会
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設立15周年
~NPO法人全国G空間情報技術研究会の歩みとこれから~

2018年7月
NPO法人全国G空間情報技術研究会 理事長 碓井 照子

 

 日本における本格的なGIS推進政策は、阪神淡路大震災直後から始まりますが、丁度その年に公表された「日本の経済システムの自己改革と国際的調和の在り方」(通商産業省産業政策局)では、急速な経済のグローバル化における産業政策の理念が「国土の均衡ある発展」から「市場競争力のある産業立地」に変化しました。この政策転換の中で、公共事業を中心にした国土の均衡ある発展政策とは真逆の東京一極集中が進み、地方経済の疲弊が始まります。特に、公共投資に頼っていた従来型の建設業や測量業は衰退しはじめ、イノベーションを必要としていました。位置情報を扱うGISは、測量業におけるもっともなじみやすいIT化のイノベーションの源泉でしたが、技術進歩が早いGISのスキルを地方の測量業に導入し、GIS技術力のある地元企業を育成するには、従来型の全国組織とは異なる、GIS学会や大学と連携した産官学連携組織でかつNPO法人の全国組織が必要であったのです。私が提唱したGIS産業で地方経済を活性化させるための実践活動が、NPO法人全国GIS技術研究会であったといえます。この15年間に、地方を拠点とするGIS技術力のある中小企業が育成されてきました。特に、東日本大震災や熊本地震などの災害時には、その重要性が、証明されたといえます。

 準天頂衛星による測位時代が始まろうとしています。Society5.0のベースとしての地理空間情報(G空間情報)活用の時代に入り、G空間情報センターの稼働、基盤地図情報は国土のインフラ情報としてさらに重要になっています。また、i-Construction、農業や林業のIT化(第一次産業のIT化)、自動運転、3次元データ時代のより広義で高度な技術力が必要とされています。名称を全国G空間情報技術研究会に改称し、これらの急激な技術革新を取り入れ、地方から日本国を豊かにする活動を、地理空間情報社会推進のために継続いたします。更なる発展を目指してこの15年間の足跡をまとめることにしました。


15年の歩みとこれから を、冊子にまとめました。是非ご一読ください。
「NPO法人全国G空間情報技術研究会の歩みとこれから」PDF
「NPO法人全国G空間情報技術研究会の歩みとこれから」 2018年6月発行

 

地理空間情報活用推進基本計画と地域の再生・活性化
~基盤地図情報の整備とGIS産業の発展~

2008年7月
奈良大学文学部地理学科教授 碓井 照子

 

地理空間情報利用推進基本法が2007年5月に制定され、2008年4月には、政府の基本計画が策定された。地方自治体でも地域の再生や活性化、安心安全で環境にやさしい地域づくり、高齢者福祉のまちづくりなど様々な地域課題を解決するために地理空間情報活用推進の基本計画が策定されようとしている。地理空間情報とは、地域情報、国土情報という言い方で使用されるときも多い。地球上に位置をもつすべての情報を意味するゆえに、地理空間と呼ばれる地域や国土、地球に関する情報は、すべて地理空間情報である。

 少子高齢化社会に入った日本では、限界集落問題をふくめ、地域の衰退が加速的に進むといわれている。一方で、農山村地域の個性を尊重し都市と農山村との共生、行財政改革と住民サービスの質の低下防止、地域資源の発掘と町・村づくり、コンパクトシティと環境対策など地域の活性化や再生は、政治的重点課題でもある。この課題を解決する方策が地理空間情報の骨格情報である基盤地図情報の整備とGISの利活用にある。

 地理空間情報を活用するためには、GIS(地理情報システム)やGPSなど地理空間情報技術が不可欠であるが、これらの新技術は、基盤地図情報といわれる骨格的な地図情報の整備(基盤地図情報)の上にその威力を発揮する。地理空間情報活用推進基本法では、国と地方自治体が連携して基盤地図情報を整備することがその条文で明記された。

 基盤地図情報とは、地方自治体の日常的な業務で生成される公共測量成果を収集し、地図情報として整備される電子地図情報である。そのため、CALSと深く結びついている。従来の紙地図作成とは異なり、鮮度が必要で短い期間で更新されなければならない。

 今や基盤地図情報整備という自治体業務が必要とされているのである。千葉県市川市では、日本で始めてGIS課が設置され、2008年6月にGIO(Geographic Information Officer:地理情報統括官)が任命された。一方、測量士や土地家屋調査士など測量に従事する技術者にとって、今やGIS技術は不可欠の情報技術である。

 地域の公共事業を支えてきたこれらの技術者は、国土づくりから電子国土づくりに従事し、地域情報産業であるGIS産業の担い手層へと変化している。地元に育成されつつあるこれらの人的資源を見つめなおすことも地域再生の鍵である。それゆえ、地方自治体の地理空間情報活用推進基本計画策定には、基盤地図情報の整備とともにGIS技術力のある人的資源の育成と深く結びついたGIS産業振興策を入れる必要がある。

 

地理空間情報の時代に測量業に期待されること

2008年8月
社団法人日本測量協会副会長
元国土交通省国土地理院長 星埜 由尚

 

地理空間情報活用推進基本法が制定され、測量法の改正もあり、測量の世界も大きく姿を変えようとしています。これらの法律の目指す所は、測量に携わるものの側から見れば、地理空間情報として重要な測量成果を広く国民の間で共有し、国民生活の様々な面で役立て経済や福祉の向上に貢献すると言うことであると思います。

 これまで測量は、「測天量地」即ち天を測り地を量ることであり、GPSやVLBIなどの先端技術を用い、高精度に成果を出すことを専心して行ってきました。一方で測量の成果を自ら活用することは関心が薄かったことは否めません。この度制定された法制度は、測量成果を巣に整備するのみでなく、GISの基礎データとして活用することを求めています。

 測量業においても、これからはその様な社会要請に応えるべく、自らが作り出してきた測量成果を自らが活用して地理空間情報社会に確立に貢献することが求められているのではないか思います。測量業においては、既にその様な取組みが行われ、成果を上げている企業もありますが、測量業界全体の流れとなっていくことが大事であろうと思います。従来の公共事業のみでなく、文化、福祉、教育などが測量成果を活用するこれらの分野であると思われます。

 地理空間情報は、測量業界のみでなく、広く産業界から関心を持たれている分野です。しかし、高品質の地理空間情報を生産できるのは測量業のみであると言ってもよいでしょう。その様な強みをもつ測量業が各界からの地理空間情報の整備に関する要望に応え、さらに自らその活用に取り組めば、地理空間情報が作り上げる世界で確実な地歩を占めることができると思います。